第199章 愛日
そしてもう一つ、私が団長補佐の執務の合間に新たに教えを乞うて知識の習得に励んだのは――――航空機についてだ。
ヒィズルから運び込まれた小型の飛行艇を間近で見ながら、私は詠嘆に似た声を漏らした。
「――――鳥の羽みたい………。」
実物の飛行艇を見ながら、飛行艇が空を飛ぶ理論を記した書物をオニャンコポンさんに解説してもらう。
揚力や推進力、空気の圧力の違いを利用して空を飛ぶ。
――――それはまるで風に向かって大きな羽を広げて飛ぶ鳥の原理そのものだった。
「そうですよ。同じ原理です。元々飛行艇ってのは鳥が空を飛ぶ理論を研究し尽くして生まれたものですからね。」
「そう、なのですか……。」
私はその本を食い入るように見つめて、一言の情報も逃さぬように読み進めた。
――――ねぇエルヴィン。
いつか一緒に見た夢が……ここにあるの。
蒼い空を横切る飛行艇は、図鑑で見た通りの大きな翼を持っていて……、人を乗せることができて……。
―――――そして、人の命を奪う大量の爆薬や銃器を……積載している……。
――――なんて、まだこの戦争に完全に向きあえていない自分を戒めるように堅く目を閉じて数回、首を横に振って雑念を振り払った。
「――――でも、だとしたら……先日教えて頂いた、空の構造と合わせて考えてみると……高度が高くなればなるほど空気密度が下がったり、飛行速度が落ちれば……揚力は低下、墜落したりするってことですか……?……鳥は揚力が低下したら羽ばたけるけれど……飛行艇は羽ばたけないですもんね……。」
ふと沸いた疑問を尋ねてみると、オニャンコポンさんは目を丸くしてから、笑った。
「ははっ!!そう、そのとおりですよ!!だからね、操縦にはコツがいります。機首を下げて機体をわざと降下させることで揚力を維持したりね。」
オニャンコポンさんは、その操縦に関してとても自信があるのだろう、にやりと自信ありげに笑って見せた。