第199章 愛日
「―――――アイビー……?」
「わぁ!!まさか……ナナさんまで、覚えてて下さったなんて……!」
7年前の翼の日に私たちに会いに、遠くから来てくれた女の子。
――――リヴァイさんと私に憧れていたと、瞳を輝かして話してくれていたあの少女は、今や立派な兵士として私の目の前に立っている。
利発で優しそうな顔立ちと、凛とした佇まいが美しい女性だ。
そして、『ナナさんまで』と言ったということは……リヴァイさんも、覚えていたということだ。
「覚えてるよ!!もちろん……!大きくなったね……!本当に調査兵団に来るなんて……!」
「はい!だって調査兵団はこの壁の勇者ですから!!」
屈託なく笑うアイビーには、なにが見えているのだろう。
勇者、そう……それはそう、見えるのかもしれない。
――――でも本当は……怯え、叫び、死んでいく仲間を――――……歯を食いしばって見届けて……そして自分の手も……汚すんだ。誰かの大事な人を殺すことになるかもしれない。私はほんの少し、アイビーがここに来てしまったことに胸が苦しくなった。
「そっか……。」
私は曖昧に微笑んで、僅かに目を逸らした。
「アイビー、何してんの、行くよ?」
「あ、待ってルイーゼ。」
声のした方に目を見ると、アイビーの後ろで彼女を待っている人物がいる。同じく新兵のようだ。
顎先までのストレートの金髪を中央で分けていて、新兵にしては大人びた雰囲気と……この子にもまた、その目に強い意志を感じる。
アイビーはわたわたとルイーゼの方を振り返って引き留めつつ、私のほうへ笑顔を向けた。その目が一瞬、私の手元に降ろされて、ごく僅かにアイビーは笑った気がしたけれど……気のせいだったのだろうか。