第1章 出会
俺の庭である地下街に、ロクな人間はいない。廃人や娼婦、荒くれどもの巣。
そこに、毛色の違う爺さんが一人いた。貧しい身なりだが、何かを憂うような、見透かすような目をしていた。
なにが特別というわけではないが、明らかに周りの人間とは違う雰囲気をもったじじぃに俺は興味本位で近づいていた。
気が向けばじじぃの住むボロ屋を訪ねる。そして、他愛もない話をする。
この日、俺は珍しく朝早く目が覚め、特にすることもなかったため、じじぃの家を訪ねた。ここの住人はどいつもこいつも朝は遅せぇが、じじぃなら起きてんだろう。
「オイ、じじぃ。」
「……おや、リヴァイか。」
返事を確認する前にドアを開けると、そこにはじじぃともう一人、見慣れないフードを被った小さな人影が俺に背を向ける格好で座っていた。その人影は、俺の声に反応してビクッと肩を震わせた。
「…心配ない、口は悪いが、悪人ではない。」
じじぃはフッと笑って、その小さな人影の肩にそっと手を触れて囁いた。