第1章 出会
壁に囲まれた世界。
俺は煌びやかな王都の下、はきだまりの地下街で生きていた。
世間では母親と呼ばれる、俺を産み落とした女には抱かれた記憶もなく、もはや顔も思い出せない。娼婦が客に孕まされて生まれたクソみたいなガキが俺だ。
俺の一番古い記憶は、母親と呼ばれる女が目の前で死んだ日のことだ。何の感情も起こらずただその屍を眺めていた。
まだガキだった俺は、その女の知人だと名乗る男に言われるがまま連れられ、生きるための術を叩き込まれた。
弱ければ支配され、奪われる。
生きたくば、強くなれと。
生きたいのか?死にたくないだけか?
ガキの頭では小難しいことはわからなかったが、あの女のようにこの世界で虐げられたまま死んでいく生き様だけは我慢ならなかった。
無我夢中で周りに牙を向き、気がつけば十八歳になる頃には、俺よりも強い奴はいなかった。