第197章 回帰
「――――病気が大事ないってのは、嘘じゃねえんだろうな?」
私が言葉を口に出せないでいると、リヴァイさんが目を合わせないまま私に問う。
「嘘じゃないです。」
「なんならボルツマンに問いただすぞ?」
リヴァイさんはずず、と紅茶をすすりながら……怖い事を言う。この……独特なティーカップの持ち方も久しぶりで、それすら……バレないように横目でちらりと盗み見る。
……頬が熱いのは、温かい紅茶のせいだ、きっと。
「………信じて下さいよ……、本当に調子も良くって……、顔色も、良いと思―――……」
そう言った途端、リヴァイさんの手が私の顎先を捕らえて……、ぐい、と無理矢理自分の方を向かせた。
「………!」
「――――ああ、確かにな。」
その目で、この距離で見つめ合うことにまた……私は耐性がなくなってしまっていた。
それでも……こんな時に……泣く娘を置き去りにしてきた私が、胸をときめかせるなんてあってはならなくて……目だけを必死に逸らした。
「なぜ目を逸らす?」
「――――……っ……そう、すべきだと……思うから……。」
小さく消え入るような声で答えると、リヴァイさんははぁ、と小さくため息をついて私の顔から手を放した。そして兵士長と兵士の距離感を保ったまま、また小さく私に尋ねる。
「――――ガキは、元気なんだろうな?」
「……えぇ、元気いっぱいです。最近はね、言葉が随分増えたんですよ?単語だけだった言葉が、段々文章になって……、相変わらず手紙をリヴァイさんだと思っているので、別の人からなのに手紙が届くたびに『りばい』って……言ってて……。」
娘の話をしていると顔がほころぶ。
思わず多弁になってしまった。
私の娘の話よりも……調査兵団のこと、外の世界のこと……もっと話すべきことはあるはずなのに、と慌てて口を噤んだ。
……けれど、リヴァイさんは思いがけないことを言った。