第197章 回帰
「――――ハンジ団長。ナナです。」
「――――ナナ!!!どうぞ!!!」
ハンジ団長の声が、あまりに明るくて嬉しそうだったから。思わずふっと笑顔になる。
「失礼します。」
扉を開けると……そこには、エルヴィンが使っていた机で資料に目を通すハンジさんが……顔を上げてくれた。
――――そして、やっぱり。
その横で……相談でもしていたのか、腕を組んでいたリヴァイ兵士長が同じように私に目線をくれた。
「急な我儘を申し上げたのに……受け入れて下さり、ありがとうございます。」
私は入り口の扉を閉めて少し歩み寄ると、深々と頭を下げた。その私を見て、ハンジ団長はふはっ、と吹きだしたように笑った。
「あはっ!!いいよそんな堅苦しい挨拶!!………それより子供のことは、大丈夫なの……?本当に戻って来て、悔いはないの?」
その心遣いが、嬉しい。
「――――はい。大丈夫です。決めた、ことですから。」
「病気のほうは?」
「今は薬の服用で随分落ち着いています。薬もたくさん持って来ました。――――よっぽどの怪我をして出血しない限り、大事ありません。」
「そっか……!それは、なによりだ。」
そう言ってハンジ団長ははぁ、とため息をついて……椅子の背もたれに身体を預けた。
「――――ほんとはね、ナナがいなくても大丈夫だから……子供の側にいな、って……。言ってあげたいんだけどね。」
「…………。」
「――――ごめん、嬉しい。戻って来てくれて、ありがとうナナ………。」
「―――――はい………!」
ハンジさんの言葉が、嬉しい。
決して戦えるわけでもなく……何か戦力になれるわけでもない私を、必要としてくれている。
――――精一杯添うって決めたあの決意を、ようやく果たせる。
――――私は、調査兵団団長補佐のナナ・オーウェンズだ。
ほっこりとした空気をよそに、1人ピリッとした空気を纏っているのは―――……リヴァイ兵士長だ。