第197章 回帰
――――街の変化は、目を疑うほどだった。
初めて見る鉄道……、見たこともない食べ物が市場に並んで……そこは活気に溢れていた。馬を駆って数日かけて……調査兵団の本部に赴いた。
――――もう、何年ぶりだろうか。
夜中に一人馬を駆ってここに来て……入団したいとエルヴィン団長に直訴するために来て……リヴァイさんと2人、紅茶を飲んで……ぼんやりと思い出すのは、もう8年も前のことだ。馬を繋いでいると、その人が……現れた。
「――――お待ちしていました。」
「………フロック、さん………。」
ずっと思っていた。
フロックさんは随分印象が変わった。
ウォール・マリア最終奪還作戦の前後は……どこか自信がなさそうで、意志も強くない……周りに巻かれて、存在感を放たない、そんな印象だったのに。
――――今の彼は……確固たる想いを感じる。
――――使命感、正義感……、あぁなんだろう……、中央憲兵の人たちと少し……重なる。私が危機感を抱いたのは、この変化に、だ。
――――正義や使命を理由にすれば、本来の人格では到底成しえないような非道なことができてしまう。
外の文明に触れた者たちへの拷問や暗殺を繰り返して来た中央憲兵も……決して娯楽でやっていたわけではなく、そこに『信じる正義』があったからだと、思うから。
「――――そう言えば義勇兵の面々が、あなたに会えると非常に楽しみにしていましたよ。」
「………そうですか。」
フロックさんに連れられて、懐かしい調査兵団本部の廊下を歩く。
――――団長室の扉が見えて来ると、心臓がどくん、と鳴った。
――――エルヴィン。
やっぱりここに戻ると………あなたが鮮明に私の脳裏に蘇る。ここで過ごした日々……くれた言葉、その体温。
ぎゅ、と苦しくなる胸を押さえながら、フロックさんに促されて団長室をノックした。
――――瞬間、分かった。
あぁ、扉の向こうに、彼もいる。