第197章 回帰
それからしばらくして、義勇兵とアズマビトを通じてエレンから手紙が届いた。
手紙の内容を見て、俺達は驚愕した。
アズマビト家からジークが得た情報か……半年後に、パラディ島をこの世から殲滅するため、世界中の要人を集め、その賛同を得るための大規模な講演を兼ねた式典がマーレ大陸エルディア人を収容しているレベリオ収容区で行われるそうだ。
それを動かそうとしているのは……ヴィリー・タイバー。
エルディア人……ユミルの民でありながら、マーレを裏から動かすほどの権限を持った人物らしい。なぜそのタイバー家がそんな権力を持っているのかは定かではないが……もし本当にそれが行われりゃ……外の世界が綺麗に一致団結して、この島を消しに来るってことだ。
―――――どうやったって、勝ち目はない……一方的に殲滅させられる羽目になる。
それを阻止するべく……そこで見せつける。
その講演式典を襲撃し各国の頭をひねりつぶし、同時に軍港を破壊して世界がパラディ島に手出しする術を……奪うのだと。
そこに調査兵団は協力し、混乱に乗じてジークとエレンを回収しろという指示だ。
「――――……なんて、無茶な………。」
「――――マーレに潜伏しすぎて、頭が沸いたとしか、思えねぇな……。」
何より……、関係のねぇ民間人を無駄に殺す気か。
――――いくらマーレ人とは言え……、理不尽に殺すなんてことは、避けるべきだ。
――――なぁエレンよ。
お前は一体何を見てる?
何を考えてる?
どう考えてもエレンの頭の中を理解できそうにない。
そんな時にふと過るのは、ナナのことだ。
「――――ナナが、いて……くれたら……。」
ハンジがぼそりと呟いた。
「あ?」
「あぁいや、分かってる。ここに連れ戻す気なんてないよ。でもさ……私達よりも幾分かは、エレンのことをわかってて……、エレンも心を許してくれる存在だと、思うから………。」
「――――……まぁ、確かにな……。」