第196章 現実
「――――ハ、ハル……!」
「はい、どうかなさいましたかナナ様。」
娘と一緒に遊んでくれていたハルを呼んだ。
「この子と一緒に、ここから、離れて……!」
「………は、はい……!」
私の只ならぬ様子にハルは察して、娘に声をかけてすぐにその場から馬で離れた。その姿を見届けて、その人物と相対する。
「―――――何か用、ですか………フロックさん……。」
「―――――嫌だな、そんな警戒しないでくださいよ。」
警戒するなって……、エルヴィンが眠る棺の横でのあなたの振る舞いを、忘れてなんかいない。
フロックさんをキッと睨み付けて、警戒の体勢をとる。
「娘さんにも挨拶したかったのに。残念です。」
フロックさんは遠ざかる馬に目をやって、ふっと笑った。
「――――会わせるはずがないでしょう……!私はあなたを、警戒、しています……。」
「正直ですね。」
「なんで、私の居場所……。」
「――――あぁ、苦労しましたよ。リヴァイ兵長が入念に隠すから。……でもいくら兵団内の情報輸送手段を使ったところで、兵団内の人間なら輸送される手紙の情報くらい入手できます。」
「――――………!」
私とリヴァイさんのやりとりを、盗み見た。
――――それがとても、嫌だ。
嫌悪に値する感情を込めてフロックさんを睨むと、フロックさんは意も介さずに言葉を述べた。
「――――エルヴィン団長の次は兵長。エレンまでたらしこんで、あなたは脅威だ。」
「………あいにくですがその手の言葉には慣れていまして。そんなことで揺さぶられたりはしませんよ。」
「そう、残念。――――じゃあこっちなら効きますか?『とっても……可愛い娘さんですね』」
「―――――!!」