第196章 現実
今の居場所がバレた以上、娘を安全に隠す方法などない。
オーウェンズ家はもちろん、この王都に……安全な場所なんて、どこにも……。
「なに、を……要求しに、来たの……?!」
「――――嫌だな、人を悪者みたいに。」
「……人の弱みを握って付け込む、少なからず私には悪者に見えていますよ……!」
「――――あんたには責任を果たしてもらう。」
「――――………責任………?」
「エルヴィン団長が築いてきた仲間の屍の山を越えて……俺達悪魔が進む道の行末を、こんなところで我関せずと平和に過ごしているなんて赦さない。これから訪れるかもしれない地獄絵図も、希望に満ちた新しい世界も――――……あんたは見届けるんだ。ちゃんと。」
「――――………!」
「――――また連絡しますよ。あぁそうだ、このことは誰にも言わないほうがいい。………それこそ、可愛い娘さんが大事ならね。」
フロックさんは人差し指を唇の前に立てて、口角を釣り上げた。
その表情に、体が震える。
――――そして私に背を向けて、その場を去った。
リヴァイさんは十分に警戒してくれていた。
――――私も、警戒していた。
外から入って来た人たちにとって……やはり脅威とされる人類最強が気に掛ける存在であるということはわかってたから………。でも、まさか……調査兵団の中にいた彼が、こんな行動に出るなんて……思ってもみなかった。
―――――でも。
もう今さら『ああすればよかった』なんて考えてもどうにもならない。
――――それに彼の言うことも一理ある。
見届けろというのなら、応じよう。
絶対に守ってみせる。
あの子の笑顔と……あの子が生きる未来だけは。
―――――命を繋ぐのは、あの子を守るのは……私の役目。
ねぇそうでしょう?
エルヴィン、リヴァイさん。