第196章 現実
『俺は……お前の何だ?』
心臓が爆発、するかと思った。頬が熱を持って、何て答えていいのか……わからない。
『……あ、……あなたは……家族………。』
――――ちがう。
ううん、家族、だけど……、でも、あなたは特別で……、エレンを、好き、で……でも……、知ってる。
エレンはナナの事が昔から、好きで……。
勲章授与式のあの日も……ナナがエレンを診てくれた……その後、私は気付いてしまった。
――――ナナの唇に血が滲んでいて、エレンの唇にも血がついていたことも。
――――今でも、ナナを守ろうとしている。
――――だから……家族、以上の言葉を……言えなかった。
あの時勇気を出して、あなたのことが好きで、大好きで………、ずっと側にいてって、我儘を言えたのなら……結果は違っていたのかも、しれない。
そんな微妙な空気が流れた中で、あの少年の祖父だろうか……異国の装束を着たおじいさんが、温かい飲み物を持って来て話しかけてくれた。
何を言っているのかはわからない。
――――言葉も通じないけれど、その少年とその家族が私たちをもてなしてくれているのがわかった。私たちはその人たちの輪に入って、言葉も通じないなりに身振り手振りで想いを伝えあって、笑い合って――――楽しかった。
気付けばアルミン、コニーやジャン、サシャも一緒になって騒いでいて……そのまま、みんなでそこで眠った。
私たちを見つけに来てくれたのはハンジ団長と兵長で、特に兵長にはこっぴどく𠮟られたけれど……こうやって知らない文化の人たちとも、言葉が通じ合わなくても……分かり合えるんじゃないかって、そう、微かな希望を見たのに。
絶望に似た感傷の中、数日後、エレンからアズマビト家に手紙が届いた。
そこには「ジークに全てを委ねる。俺はパラディ島には帰らず、このまま潜伏を続けるが、時折手紙を送る。」とだけ書かれていて……、次にエレンに会えたのは約半年後………。
罪もない人を、子供をたくさん死なせて、そして……かけがえのない仲間を失っても涙を流すどころか……笑った。
そんなあなたを……私は、見たくなかった。