第196章 現実
「―――依然としてその団体の理念は明らかではありません。」
「えぇ……まずは慎重に見極めなくてはなりません。その上でその団体と我々が相まみえることが叶うなら……」
「パラディ島が和平を望んでいることを表明する。――――無論私共アズマビト家は和平への強力を惜しみません。ですが……それにどれほどの実現性があるとお見込みでしょうか?」
キヨミの言葉に、ハンジは目を伏せた。
「……とても困難であることは分かっています。とても危険であることも。―――――しかしだからと言って、最善を尽くさないことはできないのです。」
「――――左様でございましょう。」
そして――――翌日。
俺達が出席した国際討論会で、ユミルの民保護団体が訴えたのは――――……俺達の微かな希望を見事に、打ち砕いた。
「我々は各国に散った “ユミルの民”の難民へ援助を求めます!!彼ら難民はエルディア人であったこともなく、エルディア帝国の危険思想は無縁なのです!!」
その口ぶりに、俺の隣でハンジも……104期の面々も、絶句した。
「彼らはただエルディア帝国に交配を強いられた哀れな被害者なのです!!依然憎むべきは島の悪魔共に他なりません!!忌むべきは100年前よりあの島に逃げた悪魔!!我々の敵はあの島の悪魔なのです!!」
――――最初から望みなんてものは薄かった。
だが……俺達パラディ島の悪魔の声に耳を貸してくれる存在など無いに等しいのだと――――……無情な現実を突きつけられた。
そして………討論会が終わる頃――――……
エレンが姿を消した。
次にエレンに会った時にはもう、全ての嫌な歯車が、奴によって回され始めて………
そこに巻き込まれた罪なき大量の人間の断末魔が、響き渡っていた。