第196章 現実
「――――あぁリヴァイ兵長、マーレでは造花の加工技術も進化しているんですよ。美しさはそのままに枯れないという利点がありますからね。最近では贈り物や装飾に造花を使うことも多いんです。」
「――――造花……。」
「偽物と言ってしまえばそうですが……、枯れずにずっと美しいままなので……利点の方が大きいと言えるでしょうね。見た目も本物と遜色ないほどでしょう?」
オニャンコポンから造花について聞かされ、俺はまじまじとその籠の花を見た。
「兵長、どうせなら情熱の赤い薔薇にしましょうよ!!なんかエロいですし!」
妙なテンションでサシャが赤い薔薇を手に取った。
「いや、ナナさんには青でしょ。あの髪に映えますって!」
更に横から入って来たジャンが、青い花を手に取った。
「――――うるせぇ、ナナには……。」
ナナに贈る花の色なんて、決まってる。
俺は一輪の白い花を手に取った。
小さく無垢な白い花がたくさん集まったようなその花は……可憐で、ナナのイメージにぴったりだった。
「……うん、さすが兵長。なんか……似合います、ナナさんに。」
俺が手に取った花を見て、サシャが感心したようにうんうんと深く頷いた。
「おい、いくらだ。」
女のガキに尋ねると、ぱぁっ、と嬉しそうに笑った。
金を払って受け取ったその花を、少し小さく束ねて胸ポケットに入れる。なるほど、生花だと持って帰ることなどできねぇが……利点というのは確かにな。
――――ナナが喜ぶ顔を想像して、少しふっと心が緩んだ。
――――と、その時サシャの背後で明らかにマーレ人とは違う人種に見える、異国から来たという風貌の男のガキが不審な動きをしていた。
――――こんな動きは、地下街で嫌程見て来たんだよ。