第196章 現実
下船した俺達を、オニャンコポンが迎えに来てくれていた。
「皆さんマーレ大陸へようこそ。アズマビト様のお屋敷までご案内致します。」
オニャンコポンに案内されつつ、街を歩く。
どんな人間が暮らしているのかと思っていたが……そこには一見して、俺達となんら違わない……普通の人間の普通の生活があった。
「あぁ?!あの馬……!!馬か?!あれ?!」
「牛……?じゃないですか?!そういう牛ですよ!!」
「車だよ!!聞いたろ来る前に!!オーイ車!!」
地を走る、馬でも牛でもねぇ鉄の塊。
車も鉄道も、この大陸では当たり前に普及している。
「……おいオニャンコポン、奴らを止めねぇと鉄の塊にニンジン食わせようとするぞ。」
「はは……そんなまさか……。――――って、ニンジン買ってる!!!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐコニーやサシャを後目に、エレンは顔色一つ変えず……心ここにあらずと言った表情だ。――――まぁこいつには、親父の記憶がある。この景色も、散々親父の記憶で見て来たということなんだろう。
露店が多く立ち並び、活気あふれるその場所で、俺のスーツの裾をつんつん、と引っ張られる感触がした。
「あ?」
振り返ると、小さな女のガキがおずおずと俺に向かって、籠に入った色とりどりの花を差し出した。
「お、おはな……かって、ください。」
「――――あ?花なんて……。」
その籠の花を見ると、どうやら生花ではなさそうに見える。
精工に作られた……偽物か?
俺がそれを覗き込んでいると、横からアイス、とやらを頬張りながらサシャが口を出して来た。
「あ?!兵長、もしかしてナナさんに贈り物ですか!!さすがエロ兵長!!」
「誰がエロ兵長だ。」
「――――ん?しかも見てください、これ……本物の花じゃないですね。」
「あぁ、偽物を売りつける気か?このガキは……。」
俺がジロリとそのガキを睨み付けると、びく、と小さく肩をすくめた。