第17章 蠱惑
ふと木の上で一息ついていると、風を切る僅かな音がして振り返ると、そこにはリヴァイ兵士長が立っている。
私はビクッと身体が震えた。あまりに気配もなく速すぎて、心臓に悪い……。
「………ナナ、なにも、無かったか?」
「??はい、森の中の訓練は初めてですが、怪我はありません。」
「………違う。あいつに、何もされてねぇだろうな。」
「……あいつ、とは………」
リヴァイ兵士長の心配の意味が掴み切れず、とぼけた顔をしてしまった。
「………やけに頭の回転の早い、いけすかねぇ金髪野郎になにもされてねぇか、と、聞いている。」
リヴァイ兵士長は私の事を睨みながら、小さな声で言った。エルヴィン団長のことをこんな風に言えるのは、おそらくリヴァイ兵士長だけだ。
「あるわけないじゃないですか。怒りますよ。」
「………ならいい。」
私が笑ってみせると、フイッと顔を背けて、だけど私の頭をサラリと撫でて行ってしまった。
「兵服を着てる時はわきまえろって……リヴァイさんが言ったのに。」