第17章 蠱惑
兵舎に戻り、いつものように訓練に合流した私は、不安に捕われないよう、いつもよりも高く飛んだ。大きな風の抵抗の向こうには、ふっと大空が広がる。
冬の乾いた空気のなか、その青さはより澄んでいて、まるでエルヴィン団長の瞳のようだ。
今日の訓練は森の中で行われている。いくつか設置されたコースを立体機動ですり抜けていく。みんなは途中の巨人の模型に攻撃を入れていくけれど、私は避けるだけ。……少し悔しい。
ただ、模型ですらゾッとするその大きさ。この大きな手でつかまれたら、終わる―――――。皆はこんなものと戦っているんだ、私は絶対に足を引っ張るわけにはいかない。