第195章 決意
「――――ああ、さすが兵長だと思ったよ。外の世界の奴らが入ってきて……ややこしい話になる前に、ナナを上手く隠した。兵団からも戦線からも遠ざけて……。今ナナはきっと、兵長の子供を幸せそうに育てながら……笑って過ごしてる。」
「――――………。」
「俺の仲間の命も、ナナの幸せも……俺から何かを奪おうとする奴はみんな敵だ。俺が全て……駆逐する。」
「――――っ……エレン……。私は……あなたを……何としてでも止めないと……、二度と……胸を張って生きていくことが出来ない……。」
ヒストリアは震えながら、涙を浮かべて訴えた。いつまでたってもお前は “いい子”なんだよ。
「耐えがたいなら始祖の巨人の力で記憶を操作する。それまでお前が黙っていれば……。」
「そんなこと……!」
「できるさ。お前はあの時俺を救ってくれた、世界一悪い子なんだから。」
ヒストリアは愕然と俺を見つめた。
まるで知らない人間と相対しているように。
自分の運命の悲惨さよりも……顔も見た事のない人間の命を思いやれるお前は間違いなくいい子だ。
――――だが捨てていい。
そんなものは。
自分の為に生きろ。そう言ったのは……お前だろう?
散々思い悩んだように顔を俯かせてしばらくして、ヒストリアは顔を上げた。