第195章 決意
「他に方法は無かった……。」
「―――………。」
そうだ、最善の策を模索すると兵団会議で大口を切ったものの……結局めぼしい手立てもなければ何一つ変えられていない。
――――だが、それもこれも……この先の “あの未来” のために必要な決断だ。
「でも……あの時エレンが私を庇ってくれて……みんなが動いてくれたから……私はそれで充分だよ。」
「お前がよくても……俺は違う。」
「………え?」
「――――この世界を滅ぼす。 “地鳴らし”を発動させて。この島以外の世界を全て……。」
俺の言葉にヒストリアは震えながら、俺に面と向かって訴えた。
「――――嘘でしょ……?!」
「――――こんな嘘つくかよ。俺には……それが出来る。」
「そ……、そんなの間違ってる!!島の外の人全てが敵じゃないのに……!」
「――――………。」
「あなたのお母さんみたいに!!突然……何で殺されるのかわからない人が殆どなんだよ?!」
ヒストリアが必死に食い下がるから……俺もその目を見て、本気だと……答えた。
「わかってる。でも……憎しみによる報復の連鎖を完全に終結させる唯一の方法は、憎しみの歴史を文明ごとこの世から葬り去ることだ。」
「――――っ……そんな、方法しか、無いわけ……ないよ……っ……!」
「お前に島の生贄になるためだけに生まれる子を産ませ、親子同士を食わせ続けるようなマネは、俺がさせない。――――子を産むってのは……そんな悲惨な運命のためじゃねぇだろう。そうだ、ナナみたいに……お前にも、命を懸けて子を産むのなら幸せに笑っていて欲しい。」
命を懸けて産んだ子に自分を食わせ、更なる苦悩を与えて生かし続けるなんて……絶対にさせない、そんなこと。ヒストリアは目を見開いて、思いがけない言葉を発した。
「―――ナナさんのこと、知ってるの……。」
どうやらヒストリアも、ナナが子供を産んだことを知っているようだった。