第195章 決意
ミカサを、アルミンを。
調査兵団のみんなを。
ナナを。
ナナが愛するナナの家族を。
守るにはそれしかないんだ。
そして俺のこの選択が、あの結末へと駒を進めることになる。――――だからどんなに非道でも、無慈悲でも……罵られようとも、血に塗れようとも……やるしかないんだ。
俺の決意を聞いて、フロックは黙って俯いた。
「――――お前が見たいのは、どんな景色だ?」
俺の問に、まだフロックは俯いたまま……しばらくして、目線を俺のほうに上げた。ボロ小屋の隙間から吹き込む風が、蝋燭の火を揺らめかせる。
ふ、と消えかかったように見えたそれは……また、新たに送り込まれた風で勢いを取り戻して燃え上がった。
「………新しい世界。」
「――――そうだ、あの地獄を生き延びて……その結末が安楽死?笑わせんな。俺達を蹂躙した罪は……償わせる。俺達に全ての憎悪を向けるなら……その憎悪も恐怖も、全て返してやる。なぁそうだろ?フロック。お前は……それが出来る悪魔を、探していただろう?」
「――――………!」
フロックの瞳が揺れる。
――――知ってる。
フロックがナナに固執しているのは……自分達を死に導いたエルヴィン団長が愛した女だからだ。
エルヴィン団長を悪魔と言いながらも、強烈に憧れて焦がれている。全てを捨て去って悪魔となりながらも、何かを成そうとした男に。
――――その想いが拭いきれず、その悪魔に代わる存在を求めてるんだろう?
――――ならなってやる、俺が。
「――――俺につけフロック。新しい世界を、見せてやる。」
「――――エレン………。」
――――想定通りフロックはイェレナではなく、俺についた。
だが……一つ想定外のことがあった。
俺がそれに気付いた時には………、もう後戻りさせられない状態だった。
進撃の巨人を宿した者の目から見たものを、時を越えて自分のもののように見ることができる。それなのに……ナナのことに関しては、記憶の断片でも僅かな1つの画しか見せてくれなかったことを――――……呪った。