第195章 決意
そしてこの日から、フロックは俺に最も近しい存在になった。見張りはもちろん……あらゆる情報を集め、俺のところに持って来る。
さすがに元いた駐屯兵団からの情報はいち早くフロックの耳に入るようだ。それに……そこから憲兵団の動きもおおよそ知りうることができる。更には調査兵団の動きまで……、身動きの取れない俺に代わって、実に良く動いてくれた。
イェレナとの密会についてもフロックがその場を設け、仲介する。ある日、フロックから嫌な事実を聞いた。
「――――兵団上層部は……お前と接触するために来たジークを捕まえて、巨人化させたヒストリア女王に食わせる線をまだ諦めちゃいないぞ。思い通りにならないジークよりも、従えやすい女王に器をとってかわらせる気だ。」
「――――………。」
「俺にとっては壁内人類を守る為ならヒストリアには悪いが……あながち悪くない策だと思うが――――……。どのみち安楽死計画にはヒストリアの残す王家の血筋が必要だ。……早いか遅いか、だろう。いずれその日は来る。」
「それだけは、俺がさせない。」
俺が確固たる意志をもってその言葉を発したことも、フロックは分かっていた。
「――――俺はジークの計画に従う……フリをする。お前もそうしろ、フロック。」
フロックは目を細めて……俺の本心を測りかねるという表情で見つめた。
「……従うフリをして……何をするんだ?」
「――――世界を滅ぼす。」
俺の言葉にフロックは唖然とした。
「すべての敵をこの世から、一匹残らず駆逐する。」
「――――それ、は………。」
「お前も同じだろう?守りたいものがあるだろう?」
「――――………。」
「俺にはある。俺の大事な奴らの未来を……安楽死なんかで終わらせない。俺達を脅かす何かがあるなら……それが世界だと言うのなら……、その世界ごと滅ぼして、俺は守る。大事な者を。――――そしてそれこそが、自由だ。」