第195章 決意
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――――誰にも手出しさせない。
俺はこの島に住むみんなを……仲間を、家族を守ってみせる。その為にはどんな犠牲も厭わない。
――――そう、それでいい。
そうやって突き進むしかないんだ。
勲章授与式に見た未来の断片。
その中のいくつかは……こうして隠れて過ごしている間にも現実となってこの目でそれを見た。
俺が巨人化してマーレ軍の戦艦を鹵獲する場面や、その時に俺に向けられた……マーレ兵の、化け物を見るような恐怖に引きつった表情。
運命は――――……どうやら敷かれたレールの上を走ることしかできないらしい。
逸れることなど赦されないのだから。
鉄道開通式の日、俺の護衛についている奴の顔が……見慣れない顔だとは、思った。
案の定その見慣れない顔は―――……、辺りが夜の闇に包まれてから俺を連れ出した。――――あいつとの密会を果たさせるために。
灯りの一つもない真っ暗な農地の隅にある古びた小屋。
この小屋も断片的に、いつかの記憶で見た事がある。その窓から小さく揺らめく光が見えた。俺はその扉を開いて中に入る。入れば、あいつがいるんだ。
「――――あぁ来てくれた。久しぶりだね、エレン。」
「――――イェレナ。」
俺がその名を呼ぶと、目を細めて嬉しそうに僅かにイェレナは笑んだ。そのイェレナの後ろで銃を手にしているのは……フロックだ。
「フロック。――――お前がイェレナの言うことに従うとは思わなかった。」
「………俺はエルディア人にとって……この島にとって最善だと思うように動くだけだ。」
「そうか……。お前は変にクソ真面目だからな。」
「うるせぇな……ほとんどの人間がお前みたいに特別な存在じゃないんだ。ひたむきに最善と思えるものを信じついていく、それの何が悪い。」
フロックの口調が僅かに荒ぶったその一瞬、イェレナは俯いた。――――俺は気付いていた、その口角が僅かに引き上がっていたことに。なるほどイェレナになにかそそのかされて……口車に乗ったというわけか。