第195章 決意
話に花が咲いてしばらく経ってから、ロイさんがふと腕時計を見た。
「あっ、まずい……。」
それにつられてエミリーさんも部屋の時計を見た。
「あ、本当だ。いい時間ですね。すっかり女王陛下のお時間を取らせてしまって……!楽しくってつい……申し訳ございません!」
「いえ!!私の方こそ楽しくてつい引き留めてしまいました……!何かご用事があられるのですね、大丈夫ですか……?」
「ああいえ、大したことはないのですが……。」
エミリーさんが愛想笑いを見せたその時、ロイさんが立ちあがった。
「大したことだよ!!可愛い姪の……、僕の天使の誕生日プレゼントを買いに行かなくちゃならないのに!!」
「ロイ君!!」
「――――姪………?」
エミリーさんが慌ててロイさんの口を封じたけれど、私にはハッキリ聞こえた。
“姪”と言った……?
つまりロイさんの姪……と言うことは姉であるナナさんの……娘………?
ロイさんはあからさまに『あ、マズい』というバツの悪そうな顔をした。
「――――ああ、言っちゃいけなかったんだっけ……。」
「そうだよ……良くないよ……。」
ロイさんが頭をぽりぽりと掻きながらエミリーさんに窘められる。
「ナナさんに……娘さんが生まれたんですか……?!」
そんなことはよそに、私はどうしても我慢できなかった。
だって、そんな嬉しいことがある?
大事な人が子供を授かって……きっと幸せそうにしてる。
ナナさんに子供が生まれたら……きっとエレンも、リヴァイ兵長も喜んでるだろう……!
でも待って、父親は誰なのだろう……?
まさか……やっぱり、そうだよ……、あんなに想い合っていたんだから……リヴァイ兵長に決まってる……!エルヴィン団長が亡くなった後も、リヴァイ兵長がナナさんを支え続けていたって聞いた。
そもそも子供を授かっていることを隠して病気療養として身を隠しているのは……きっとナナさんの身を守るためなんだ。これ以上の詮索はしないし、私から誰にも口外しないと誓う。
「――――……はい。」
ロイさんはしまった、という顔で正直に認めた。