第194章 蜜語
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俺は調査兵団の一員として、鉄道開通式と祝賀会に出席することになっていた。
――――が、もちろんメインで前列に並ぶのは団長や兵長たちで……俺は隅の方で、義勇兵が不審な動きをしたときの対処要員として見張りについていた。
団長や兵長を始め、兵団幹部は義勇兵のことをまだ信用しきっていないようだが……こいつらに頼る以外に、この島以外が全て敵で……相手は巨人を操れて……航空機や戦艦を持っていて……俺達の死を望んでて。そんな状況を切り抜ける方法がどこにあるんだと、俺は問いたい。
未知の物に怖気づいてピーピー喚いても状況は変わらない。
俺はあの時に生き残ってしまったんだ。
だから――――……人類を救うために生きるんだ。
その人類とは、俺達の死滅を望む外の奴らじゃない。
この島の……哀れで善良なエルディア人を……この窮地から救いださなければ……マルロに……あの投石の中死んでいった仲間に、申し訳が立たない。
「――――フロックどうした。怖い顔をして。」
「――――……バリスさん。」
開通式が行われた会場から祝賀会会場へと人々が移る雑踏の中、イェレナの見張りをしていたバリスさんが声をかけてきた。
「お前も見張れよ、他の義勇兵の動きにも目を配れ。」
「はい……。」
そう言われて、渋々辺りを見回した。そんな中で、遠くで大きな悲鳴が聞こえた。
「何だ……?」
「――――フロック、イェレナの見張りを代われ。俺が見て来る。」
「は、はい……!」
そう言ってバリスさんは耳元で、『怪しい動きをしたら拘束しろ。』と言葉を残して、喧騒の渦中に走り去った。