第194章 蜜語
「――――ロイ君が幸せそうで、私も……嬉しいです。」
「……うん、私も。」
私とエミリーは目を見合わせて笑った。
それからしばらくしてお母様も到着して、家族みんなで………娘の誕生日を祝って食卓を囲んだ。娘はずっとずっと幸せそうで嬉しそうで……、この小さな天使は、ずっと冷たかったこの家に……暖かさを、笑顔を運んできてくれた。
食事を終えてみんなが和やかに談笑している間に、ずっとハイテンションだった娘は……ロイに抱かれたまま、眠ってしまった。
ロイは嬉しそうに、僕の部屋でこのまま一緒に寝る、と言って……エミリーを放って行ってしまった。弟が本当にごめんね……と思いながらエミリーに声をかけると、『あんなロイ君が、私は大好きなんです。』と言ってくれて……、私は少し、嬉しくて涙が出た。
厄介な弟を……難しいあの子を、包み込んで愛してくれるエミリーがいてくれて本当によかったと……そう、思った。
娘をロイに預けて、久しぶりに一人でゆっくりお風呂につかってから自室に戻る。
いつぶりだろう。一人でベッドで眠るのは。
そんなことを思いながら、自分の部屋のベランダに出る。
ふ、と息を吐いたその蒸気が夜空へ昇っていく。
「――――Happy Birthday to you……。」
どんなに離れていても、あなたの為に歌う。
この雪と風に乗って……あなたのところに届いてくれたらいいのに。雪の舞う夜風は冷たくて……体がぶるっと震える。
「――――会いたい……リヴァイさん………。」
あなたがいないと寒くて。
私の心をぽかぽかにしてくれる存在は今、ロイと共に眠っている。母ではないただの私は……ただのナナは、あなたがいないと寒くて凍えてしまう。
あなたの早くて強い鼓動と、力強いのに優しい抱擁を思い返しながら……彼の誕生日を祝う歌を毎年恒例のように風に乗せて、歌った。