第194章 蜜語
「ロイ君、歩くの早いよ……!あ、ナナさん!こんばんは!」
「エミリー、こんばんは。ごめんね、わざわざ来てもらっちゃって……。」
「いえ!お招きいただき嬉しいです。」
ロイの後を追うように、また手にたくさんのプレゼントを持ったエミリーが部屋に入ってきた。どさ、と荷物を置くと、律儀に私にぺこりと頭を下げてくれた。
「ロイも研究お疲れさま。2人共……す、すごいプレゼントだね……これ。全部この子に?」
「当たり前じゃないか姉さん!僕の天使に何を贈れば喜んでくれるかなって、いくら考えても選びきれなかったんだもん。ほら、見て!」
ロイは娘を降ろすと、沢山の紙袋から一つ一つプレゼントを取り出しては娘に渡す。
「絵本でしょ?」
「えほんすき!」
「ぬいぐるみ。」
「ぬいぐるみ!」
「ドレスに……。」
「どれす?」
「靴!」
「くつ?」
「バッグでしょ?」
「ばっぐ。」
「それから……。」
「まだあるの?!」
私は思わず呆れて声を上げた。
「だって見てよこの可愛さだよ?控えめに言って世界一の美少女で神だよね。あれもこれも似合うなって思ったらもう、決められなくてさ。」
「………そう………とんだ叔父馬鹿ね……。」
「いえナナさん……これでも私はだいぶ止めましたよ……。」
「えっそうなの?!」
「だってロイ君最初、『僕の天使は外で遊ぶのが好きだから……、土地買おっかな。』って言ってました。」
「土地?!」
「もしくは馬。」
「馬?!」
ちょっと理解がついていかなくて、ロイの方を呆気にとられたまま見つめると、ロイの膝に嬉しそうに座って、もらったばかりの絵本を読んでもらってご満悦の娘の姿が目に入る。
――――父親が側にいないまま育ったこの子に、寂しい思いをさせていないだろうかと……チクリと心が痛む。
微妙な顔で私が楽しそうに絵本を読む2人を見つめていたからか、エミリーは優しい表情で言った。