第194章 蜜語
ふと娘越しに窓の外を見ると、太陽が随分遠く感じるほど空が高くて……秋風が吹いて木の葉が舞っている。
僅かに窓を開けてみると、体を撫でるような感触の湿った風ではなく……からっと乾燥した、かさかさとした肌触りの……もう冬を感じさせるような風が舞い込んで来た。
「――――また、聖夜が来るね。」
「せいや?」
「そう、あなたの誕生日。そして……リヴァイさんの誕生日。」
「りばい、さん。ないと。」
娘はそう言って、お気に入りの眠り姫の絵本を開いて……、眠り姫を守るナイトを指さした。
――――リヴァイさんからの手紙には、こうも書いてあった。
“外の世界にお前も行きたいなら、一緒に来るか。――――と、言ってやりてぇが、お前がどんなに望んでも、連れては行かない。”
それ以上は書かれていなかったけど、わかるの。
大好きなあなたの考えることは。
義勇兵を統率するイェレナという女性を、リヴァイさんは信用しきっていない。そして……私は、ジークや義勇兵が最も欲する存在であるエレンの半身内であり、敵に回したくないであろうリヴァイ兵士長が気にかける存在で……、言わばアキレス健のような……押さえられると厄介な立場だと理解している。だからリヴァイさんは一度も私に会いに来ないし、私も会いに行かない。
リヴァイさんは警戒して、義勇兵がこの島に滞留しだしてからすぐに身を隠せと指示をくれた。
オーウェンズの名を持っていれば、家を特定されるのは容易い。王都のこの私が娘と暮らすアパートは、身内とリヴァイさん以外誰にも知らせていない。この手紙のやりとりすら、民間の郵送会社を使用しておらず、兵団内の情報輸送係による輸送にしている。民間の郵送会社に義勇兵側が目をつけたら……、私の居場所が明るみになるのはすぐだ。あくまで調査兵団団長補佐の私に情報伝達をしている名目で、情報輸送係を使う。兵站拠点から一度トロスト区に書簡や封書が集められ、そこから地区に振り分けられ、それぞれの兵団支部に配送される。王都の兵団本部に届いた手紙を、定期的にハルが受け取りに行ってくれている。
ここまでしていて、外の世界になんて連れて行けるはずもなくて。
わかってる。
私だってこの子を置いて、行けるはずがない。