第193章 来訪
「この島と世界には約100年の隔たりがあります。その遅れを埋めるのに100年かかるわけではありませんが、50年は必要になるでしょう。――――つまり50年は地鳴らしが島を守るため機能しなければならないのです。」
地鳴らしの発動条件は、始祖の巨人を有した者と、始祖の巨人の接触じゃなかったのか。――――そうだとしたら……巨人を継承してからの寿命は13年だぞ……?
何度継承していくことになる?その巨人の力を……。
子が、親を喰らうようにしながら……。
「始祖の巨人の保有者と、王家の血を引く巨人、その保有者……両者の継続的な維持。これが三つめの過程。ジークは獣の巨人を王家の血を引く者へと継承。――――王家の血を引く者は、13年の任期を終えるまで……可能な限り子を増やすこと。」
――――それは、ヒストリアのこれからの過酷な運命を示唆していた。俺は扉付近から、アズマビトの向かいの席に着席しているハンジを見た。――――俺と同じように様々な懸念を抱きつつも、それを払拭するような打開策もない。
ハンジは静かに目を伏せた。
――――だが、予想外にその策を拒否したのは……エレンだった。ヒストリアがその運命を受け入れる、と一言返事をしたあと間髪入れずに、エレンは立ち上がった。
「―――壁を破壊し蹂躙された挙げ句、家畜みてぇに子供を産まされころされてやっと生きることが許されるって言うのなら……俺はジーク・イェーガーの計画は到底受け入れられません。」
ピーピー喚いていたクソガキが、随分生意気な口をきくようになったもんだと……感心すらする。
「地鳴らしの維持に我々の命運を委ねるのは危険です。残された時間の限りあらゆる選択を模索するのが我々の取るべき最善策ではないでしょうか?」