第193章 来訪
――――一旦はジークの提案を棄却し、こちらから再度ヒィズルに策を持ちかけた。
ヒィズルを介して他国と同じように友好関係を結び、それを増やしていく。
――――氷爆石を資源として売買するような繋がりなども作れるかもしれねぇ。血を流さずに対話の元で俺達の現状を理解してもらおうとするのは……なんとも甘すぎて……、調査兵団の奴らはどいつもこいつも情に熱く、大切なものをそれで本当に守れるのか?と不安すら覚えるほどだ。
――――なぁナナ。
お前に似たのか……エレンもアルミンもミカサも……お前と同じ、甘っちょろい夢を見やがる。
――――だがそれが、悪くねぇと思う。
アズマビトは俺達からの提案を持ってまた本国ヒィズルへ帰った。――――数週間後、その返事は……良くない、ものだった。
そりゃそうだろう。
ヒィズルは危険を冒して悪魔の島と他国との橋渡しなんて危険度の高い仕事を引き受けるわけがないということ、あいつらの狙いは氷爆石だ。宝の山だからこの島に目を向けたのに……友好国が増えればヒィズルの利益が分散される。金の匂いに敏感なこいつらにとって、それだけは避けたいはずだ。
「―――まぁわかってた結果だよ。」
その日は真夏の太陽が照り付ける中、俺とハンジは……鉄道用の線路を引くことを施行していた104期のところを訪ねてその結果を伝えたが、予想通り、と言った顔で全員が俯いた。
――――まったく、世界ってのはそこまで甘くない。
「――――そうだ。このままアズマビトを頼りに海外を探ろうと結果は変わらないだろう。世界からしても、顔も見えない相手なんか信用するわけにいかないからね。」
ハンジは、迷いのない瞳で言った。
「だから、会いに行こう。わからないことがあれば理解しに行けばいい。それが調査兵団だろ?」
―――――その表情はまるでエルヴィンのそれと同じで……、あいつのイラつく横顔を思い出す。
――――そして俺達は、ついにマーレ本国へと足を踏み出すことになった。