第193章 来訪
「そうなる前に、話し合えないのかな?港ができたらマーレや世界中の人と話し合って……誤解を解けば……。」
「誤解?――――誤解って何のことだよ?」
エレンは僕の言葉を否定したい様子で、銃を構えたまま横目で僕に視線をやった。
「だから……僕たちは怖くないって……。」
「……世界から見れば俺達は巨人に化ける怪物だ。そこに誤解は無いだろ?」
――――相容れる術はないと、言いたいようだ……。
そりゃそうかもしれない。
エレンは今の兵站拠点でマーレの人たちと一切触れ合ってもいない。どんな人たちなのかも知らない。マーレの人が作った料理を……特にサシャなんて毎度泣きながら嬉しそうに食べている姿なんて……そしてその姿を見て、マーレ側の人たちが嬉しそうにしているなんて……想像できないんだろう。
ミカサも同じように思ったのか、エレンを諭すように言った。
「でも……仲良くなれたマーレ人もいる。」
「何人だ?殆どのマーレ兵は収容所の壁を睨み付けてるだろ。」
「……それだって、時間をかければ……。」
僕達には猶予がない。
明日、この空から航空機で最新型の爆弾を搭載して……世界が今度こそ僕たちを滅ぼしにやってくるかもしれない。
「そう。時間が必要だ……。」
思わず漏れ出た僕の言葉に、エレンが重ねた。
「そうだ。時間を稼ぐためには……手出しできねぇようにしてやるんだ……。この島に……。」
――――少なからずエレンが言わなかったその先を、僕はなんとなくわかった気がした。
生まれ故郷であるこの島を……みんなの命を……、エレンにとってこの世でたった2人……家族と呼べる、ミカサとナナさんという存在を………エレンがどんな手を使っても守ろうとするなんてことは、わかっていた、つもりだった。