第193章 来訪
「――――ねぇエレン、もうすぐ港が完成するんだ。マーレ工兵の力を借りたらすごく早く進むようになってさ。」
その日、僕とミカサはウォール・マリア内に身を隠すエレンに会いに行っていた。イェレナ達が最も欲する存在であるエレンを、まさか同じ兵站拠点に置いておくわけにはいかなくて……エレンを隔離して隠している。
エレンはただ黙々と……新しい銃器の扱いを練習して、いくつもいくつも的を撃ち抜いていた。
――――来たる日に、 “敵” をそうすることを想定しているみたいに。
「よく協力してくれたね。」
「そりゃ最初はお互い疑心暗鬼でまったく上手くいかなかったよ。でも時間をかけて肩書を抜きにして人同士向き合えば……きっとわかりあえる。」
僕の言葉に、エレンは肯定も相槌も打たなかった。
――――この時からもう、僕達とエレンの間には……小さな歪みがあったのかもしれない。
「アルミン。ベルトルトの記憶は何か見たか?」
「あぁ……いや、役に立ちそうなものは何も。」
「時間は無ぇぞ。ジークの寿命はあと3年もねぇ。」
「うん……そのことなんだけど。」
僕は……ずっと不安に思っていたその胸中を、話した。
「このまま……イェレナ達の作戦通りに進めていいのかな?」
「何か問題が?」
ミカサが僕に目線をやった。
―――確かに今の兵站拠点での様子を見ている限り……万事うまく運んでいる。まるで……さも未来は明るいかのように、見える。
――――でも……。
「本当に…… “地鳴らし” で世界を脅すことでしかエルディア人を守る術は無いのかな……って。それじゃあ本当に世界を恐怖に陥れる悪夢だ。」
――――甘い事だって、わかってる。でも……最善を目指さずに諦めたくはない。