第193章 来訪
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「――――資材はもうほとんど揃ったっていうのに……なかなか完成までは遠いな……。」
ハンジ団長が建設途中の港を見て、ぼそりと呟いた。
「港が完成して……交易が出来るようになって……物の行き来が活性化したとしても、島内での移送手段が整っていなきゃ人の住む市街地まで膨大な物資を運べない……。そうなると早く “線路”を引いて…… “列車”も稼働させなきゃなのに……。」
ハンジ団長は振り返って、まだ枕木が積み上げられただけの線路と呼べる状態ではないものに目を向けた。
「戦艦をもう20隻以上鹵獲しています………いくら他国と戦争中のマーレでも、そろそろおかしいと気付いて……今度は空から攻めて来る、何てことになる前に……早く外交ができるレベルに整えなければ……。」
「そう、分かってるんだ……アルミン。」
義勇兵は秘密裏に繋がっている友好国から資材を調達はしてくれる。鹵獲した戦艦に積載されていた物資もとことん活用させてもらう。だとしても、この島の人間が……全く未知の技術に触れながら見たこともない物を作るなんてことが計画通りに進むわけもなく……ハンジ団長は、焦っていた。
「――――拘束しているマーレ兵の中から工兵に従事してもらいましょう。」
「えっ……。」
「現在僕たちとやりとりしているのは義勇兵幹部のごく一部……イェレナさんとオニャンコポンさんをはじめ、数名ですが……あれだけの戦艦を操っている工兵が何人もいるんです。絶対に僕たちが手探りで着工するよりも早く作れるはずです。」
「――――でもさ……なかなか力を貸してくれないよ……。イェレナたちはそもそも義勇兵で私たちと組むつもりで来ているけどさ、マーレ兵からしたら……ここは憎み続けた悪魔の島で……、私たちは、悪魔だ………。」
いつになくハンジ団長は弱気に俯いた。
いつも元気に、気丈に振る舞われているけれど、僕にはわかる……ナナさんがいなくなってから……少しずつ少しずつ、まるで疲労や無理が蓄積していっているみたいに、時折後ろ向きな言葉が出て来る。