第193章 来訪
「いい加減警戒を解いて欲しいです。あなたはいつまでも俺達と相いれない立ち位置を崩さないんですね。他の調査兵団の人たちはほら……あんなに打ち解けてるのに。」
オニャンコポンが目をやった先には、兵站拠点の一角でぎゃあぎゃあと騒ぎながら見たこともねぇ飯を食っている104期の奴らがいる。
「ぐあぁあぁああうまぁああいいい!!!」
「オイ!!ずりぃぞサシャ!!!」
「俺も食いてぇ!!」
「マジかよ、なんだよこれ……!こんな武器みてぇな見た目の生き物がいんのか?!海って怖ぇな!!!見ろアーチ!!ハサミついてんぞハサミ!!」
「ちょ、兄ちゃん挟むなよ!!」
「……サッシュ分隊長、はしゃぎすぎでは。」
「ねぇミカサも食べてみようよ!すごく美味しそうだよ!」
………なんで104期生に混ざって分隊長がはしゃいでんだ……、まったくあのクソ馬鹿野郎は。
目を細めてあいつらを見つめる俺に、オニャンコポンはまた俺に話を振って来た。
「――――リヴァイ兵長の奥さんも呼んだらどうですか?」
「――――あ?」
何の話で……誰から聞いた、と威嚇の色を濃く出すと、オニャンコポンはたじろいだ。
「えっ?違うんですか……?いや、あの……サシャが、『兵長には病気療養中の、愛しすぎてる妻がいる』って言っていたので、てっきり……。」
あの馬鹿。
ぺらぺらとなんでもかんでも喋りやがって……。
「――――妻でもなんでもねぇ。」
「そうなんですか。あの……お元気で……?」
「――――まぁな。だがここには呼ばない。」
「そう、ですか。いやぁ……いつか会ってみたいと思っていたから、残念です。――――氷みたいなあなたの心を溶かす女性ってのに、興味があったので。」
「――――………。」
「――――へぇ、兵長には愛する女性がいるんですね?」
――――嫌な声だ。
「イェレナ。」
オニャンコポンの肩をぽん、と叩いたそのイェレナの仕草がまるで……『よく聞き出した』とでも言わんばかりに見えて――――……嫌な、感じがした。