第193章 来訪
義勇兵の強力を得て、マーレの戦艦をおびき寄せては巨人の力で鹵獲した。
そこで得た捕虜は全て殺すべきだと主張する他兵団の幹部共のビビりようには呆れたもんだ。いや、ビビるというのはいい。未知の敵と対峙するうえで必要な本能だが、ビビった上でとった行動のその先を考えられねぇようじゃ、この島の未来は見えてる。
ハンジの提案もあり、マーレ兵の捕虜にはある程度の自由度を持たせて、収容所に拘留することになった。
―――中には鉄道や航空機に詳しい者、武器、料理……色んなものに特化した技能や知識を持ち合わせた者がいて、それらの知見を吸収しておくに越したことはない。
――――ビビりつつも、それを理解して適切な判断ができる頭がいて良かったと思う。
ただ一つ気がかりなのは……あの女だ。
イェレナ。
どうにもその目が、信用ならねぇのは……俺の勘だ。
ある日突然掌を返しやがって、俺達は八方敵だらけの海の真ん中に……丸腰で放り出される、もしくはエレンの始祖の巨人を奪われたうえで、用無しとして空から大量の巨人が降って来て……島もろとも消される、なんてことにならなきゃいいが……。
義勇兵が密かに繋がりを持つ他国からの物資が次々に届き、見たこともねぇものが増えていく。
兵站拠点にも随分見慣れねぇ食い物や、建築資材なんかが積み上げられている。
「―――リヴァイ兵長!」
「………あ?」
「いやだなぁ、人相悪い上に睨んだら余計怖いですよ。」
「うるせぇな……、オニャンコ。」
「オニャンコポン、ですってば。元々は神の名前から由来してんですよ?ちゃんと覚えてくれないと。」
ははは、と白い歯を見せて笑うその男は……奇怪な風貌で最初見た時は驚いた。――――ミカサやリンファとはまた違う、真っ黒な肌。炭でも塗ってんのかと思うほど、指先まで……掌まで真っ黒だ。