第192章 回想③
「おめでとう、ナナ……!元気な女の子よ……!」
涙ながらに赤ちゃんを取り上げてくれたお母様の腕に抱かれたその子を微かに視界にとらえて……でも、血を流し過ぎたのか……そこで私の意識は途絶えた。
「――――ナナ……、目を覚まして、ナナ………。」
「――――お嬢様……っ………、戻って、きて……。」
「――――姉さん……。」
夢の中で何度も、色んな人が私を繋ぎ止めようとしてくれている声を聞いた。何を言っているんだろう、私は今どこにいるんだろうと不思議に思いながら……私はふわふわと、まるで雲の上でも歩いているような心地で、真っ白な空間にいた。
そこに、遠目に見えるのは――――……ずっと会いたかった、エルヴィンと……リンファ、アルル……お父様と……ワーナーさん……。よく見れば、ミケさんやナナバさん、ゲルガーさん……他の仲間たちも……遠くに、その姿が見えた。
「――――エルヴィン……!」
会いたかった。その腕に抱きしめて欲しい。
ずっと……ずっと、こうして会えるのを、待ってた。
でも、私が駆け寄ろうとしても、エルヴィンは首を振った。
「――――なんで……?」
エルヴィンは少し離れた場所から、いつものように穏やかに言った。
「ここに来てはいけない。」
「なんで……?私も、一緒に……そっちに、行きたい……っ……!」
手を伸ばしても、いつものように手を差し伸べては、くれない。
「――――君のやるべきことはなんだ?」
「――――私の、やるべきこと……?」
――――外の世界のことを、やり遂げろって……言ってる?……ううん違う。エルヴィンも……それを私に強いるつもりはないはずで……、だとしたら私の……、やるべきことはなに?病でもう、満足に戦うことすらできないのに……私がこれ以上、みんなの役にどうやったら立てる……?