第192章 回想③
「――――命を繋げ、ナナ。俺達の捧げた心臓がやがて作る未来を生きる、命を。」
「――――………エルヴィン……。」
エルヴィンの横で、ミケさんが……リンファが……ワーナーさんが笑う。そしてみんな、私に背を向けて――――……行ってしまった。
「……っ嫌だ、行かないで……!やっと会えたのに……っ……!私もみんなと一緒に――――……」
そう叫びながら手を伸ばしたその指先を、小さく……とても温かいものが包んだ。
そして私の耳に聞こえたのは……生まれたばかりの、生命力に溢れた赤ちゃんの泣き声。それを頼りに目を開けると、私を覗き込むのは……涙でぐしゃぐしゃになった、私の――――……家族。
「姉さん!!!!」
「ナナ!!!」
「お嬢様……っ……!」
私の指先を握るのは、お腹が空いたのか……何かを訴えて、力いっぱい私の指を握りしめながら泣く我が子だ。
「――――私の……やるべきこと……。」
霞む視界がやがてさらに滲む。
――――エルヴィン、あなたはあんなに甘く甘く私を愛してくれていたのに、肝心なところではやっぱりいつまでも私に厳しい。
――――そんなところも、愛してた。
――――ここにいるよ、繋ぐべき命が……。
横たわったまま、私は腕に我が子を初めて抱いた。
――――なんて可愛くて、なんて愛おしい。
「――――初めまして。これから……よろしくね。」
――――意地の悪い神様だけど、私の人生に……この聖夜に、二つの贈り物をしてくれたことだけは……感謝しようと思う。
「――――リヴァイさん、お誕生日、おめでとう………。」
窓の外を見ながら、1人誕生日を過ごすあなたを想う。
この雪をあなたも見ているだろうか。
起きられるようになったら、手紙を書こう。
お誕生日を祝う手紙。
そして――――……この子の誕生を知らせる手紙を。
「Happy Birthday to you……」
この世で最も大切な2人に向けたその歌は、辺りを白く清らかに包んでいく雪に交じって……柔く、響いた。