第192章 回想③
「――――答えましたよ!」
「………ああ、『お父さんとは言い切れない人』にまで挨拶するとは、律儀なガキだな。」
「リヴァイさんが意地悪言うから蹴ったんですよ。」
「だとしたら気の強さはお前譲りだな。」
小さく悪態を付き合ってから……自然と距離が縮まって、唇が触れる。
「――――リヴァイさんは、ずるい。」
「あ?」
「――――こんなに私を手なずけて甘やかして……、あなたなしではいられなくする。」
「――――計画通りだが?」
「いつから?」
「――――13年前から。」
「壮大な計画ですね。」
「――――だろう?やっと手に入れた。」
「――――愛してます、リヴァイさん………。」
「――――知ってる。」
そうしてまたキスを交わしてから、ナナの歌う子守歌を聞きながら……2人並んで、月を見上げた。
――――父親になりたいなんて願望は元々俺にはねぇが……激しく情緒が乱れていた数か月前から、徐々に受け入れ始めているのか……穏やかで愛情に溢れた顔をするようになったナナを見ていると、ナナとの間にガキができるのは……悪くないかもしれないとも、思う。
いつでもお前はそうやって越えて行くんだな。
――――親友の死も、
弟とすれ違ってしまったその時も、
父親の死も、
愛する男の死も、
愛する仲間達の死も、
残酷な夢を目の当たりにした時も、
病に見舞われたその時も、
命を宿すその時も。
そうして少しずつ、変化していく。
ぐちゃぐちゃに乱されてはまた新しくなって……強くなっていく。
夢を追って目をただ輝かせていた少女が孵化して羽ばたく、その瞬間も……そしていつか羽が捥げて地に落ちるその瞬間も………
俺はずっと側で……お前を見ている。