第16章 姉弟
私は何も考えられなかった。あまりに衝撃的な事が多すぎた。
返事を保留したまま、レストランを後にし、エルヴィン団長が先に待つ宿へ向かった。
部屋を確認し、戻ったことを報告するためにエルヴィン団長の部屋をノックする。
「………エルヴィン団長、ナナです………ただいま戻りました。」
すると、内側から鍵が開く音がして、扉が開いた。そこにはすでにシャワーを浴びて、洗いざらした髪とラフなシャツを着たエルヴィン団長がいた。
「あぁおかえり。ゆっくり話せたかな?」
「……………。」
「………どうした。話を聞こうか?」
私のただならぬ雰囲気を察したのか、エルヴィン団長が扉をより開けて中へ促した。
でも、ダメだ。こんな夜遅く、リヴァイさん以外の男性の部屋に入るのは……いけない。
「いえ、大丈夫です………。」
エルヴィン団長はしばらく私を見下ろしたあと、頭をポンポンと撫でてくれた。
「………前に言ったことを理解したんだな。そうだ、夜遅く、簡単に男の部屋に入ってはいけない。」
「…………。」
「ゆっくり休んで、明日話をしよう。一人で眠れるか?」
「………はい………失礼します………。」
私は振り返り、隣の自室に戻った。
シャワーを浴びて布団に潜り込んでみたものの、全く寝れそうにない。今までのロイとの思い出を探しては、あの時も傷付けていたのだろうかと、良くない思考が頭を支配する。
すると、ごく小さな音で扉がノックされた。
そっと扉を開けると、そこには分厚い本を持ったエルヴィン団長がいた。
「あぁ悪い。起きていたかな?」