第191章 回想②
頬にキスをしてから目じりに残る涙の痕を舌で舐めとると、ナナが反応する。
ゆっくりと瞼を開いた。
子猫の喉を撫でるように顎先を指ですり、と撫でて……それを頬に移すと、ナナはその指先から腕へと目線をゆっくり移動させて……俺の目まで、辿り着いた。
「――――ただいま、ナナ。」
「――――っ……!!」
ナナは目を見開いて飛び起きて、良かった、帰って来たと……縋るように俺に抱きつく。
――――まるでガキだな。
相当不安定に見える。
まぁ……そうさしてんのは俺なんだが。
「――――どうした。」
「――――リヴァイ、さん……。」
「なんだ。」
「おかえり、なさい……。」
裾をつまむだけじゃ俺は捕まえられなかったからな?
こうやって抱き止めて、縋れ。
それでこそ俺の色に染まったお前だ。
あまりに不安そうにして俺に飛びつくのが可愛くて、多少の褒美をやるようにその額にキスをする。
「―――飯は食わないのか?」
「―――いらない、そんなの……。」
「ガキがいるなら、食わねぇと駄目だろう。」
「――――やだ。」
「あ?」
「だって放したら……っ……、リヴァイさん、また……背中を向けて、この部屋を……出て行く……っ………!」
ひくっ、と身体を震わせて、俺の胸に縋る。
「――――嫌いになったなら、そう、言って……。」
「馬鹿だな、お前はいつまで経っても。」
この世の終わりかのように泣きながら俺に縋るナナは、どうしようもないほど弱くて俺に寄りかかりきっている。涙で濡れるナナの頬をふに、とつまむと、ナナは驚いたようにその大きな目に涙をいっぱいに溜めて俺を映した。