第191章 回想②
ナナの目元に、涙の痕があることを確かめて……心の奥底で、ほくそ笑む自分がいる。
――――思い知れ。
俺がいないとお前はダメだと。
生きていけないんだと。
必要としろ。
『自由の空を見に行く』夢のためじゃなく、『生きる』というその根本ですら、俺がいないと駄目なんだと。
俺が生きる意味に、お前もぐずぐずに依存すりゃいい。
それならお似合いだろう?
「――――エルヴィンの子だとしても、だ。俺から離れるなんて赦さない。俺に愛されてなきゃ、俺がいなければ、お前は自分を保てないと……思い知れ。」
ナナの髪に指を通す。
――――言ったろ、そうなるように……時間をかけて躾けてきたんだ。
エルヴィンと深く愛し合っていた時ですら、俺がいないと駄目だったろう?
――――思いの他エルヴィンの引力は強くて……本当にその立ち位置すらあいつに奪われるのかと思った瞬間もあったが――――……、やっぱりお前の心の奥底にいるのは……俺なんだよ。
エイルと俺が培ってきた日々は、誰にも壊せないし、侵せない。
エルヴィンがナナと築いたような、夢を描いて共に高め合う、崇高な関係性など俺は望んじゃいない。
――――どこにいようと、誰といようと……誰の子を育てていようと……生きている間も、死ぬその瞬間も……俺を想え。俺を求めろ。
この巣箱で体にもそう教え込んだ。
「――――心も体も、全部……俺がいるからお前が成り立つんだと、わかったか?ナナ。」
俺は自分で呟いたクソみてぇな自己中心的な欲望をそのまま表した言葉に自嘲しつつ、ナナの頬にキスを落とす。
俺の下らねぇ意地悪で泣かせたことに多少の罪悪感はある。
せめて朝起きた時には安心するように……俺はナナを背中から抱きしめて眠るようにしていた。寝てやがるくせに、俺が抱くと丸めていた体の緊張を解いて、安心したように安らかな寝息を立てる所が……またありえねぇほど……可愛いんだ。