第191章 回想②
「――――休もう………。」
ねぇハンジさん、おかしいんです。
いくら休んでも、休養をとっても……悪い方に傾く思考はまったく晴れなくて……愛してる人の子どもを身ごもっているくせにこんな感情になることもおかしくて……なんででしょうか……。
――――そう、言いたくて今日もハンジさんに声をかけようとしたけれど……、あまりの多忙さに、私のことでこれ以上煩わせるわけにもいかなかった。
――――リンファ……ミケさん……、私今、おかしいのかな……。なんでこんなに、独りぼっちみたいな気持ちになるんだろう。
熱いお風呂に浸かりながら、膝を抱える。
なんで泣きたくなるんだろう。
「――――エルヴィン……。」
もしあれは悪い夢で……あなたが今も変わらず生きていたら……、あなたと過ごす毎日の中で、あなたの子供に違いない子をお腹に宿している私を、あなたは心から喜んで……愛してくれたんだろう。
そうすれば、日に日に変わる自分の体も心も……『おかしい』じゃなく……母になれることへの喜びだとか、誇りだとか……そういった素敵なものに変えられたのかな……。
――――そんなことを思うのは、リヴァイさんへの当てつけだ。
わかってる。
あれは悪夢なんかじゃなく……エルヴィンはもう、白い灰になって……土の中に眠っていることも。
この子が例えエルヴィンの子だとしても、抱かせてあげることもできないことも。
リヴァイさんの子だとしても、リヴァイさんは子どもを欲していないってことも。
ましてや、エルヴィンの子だとしたら……リヴァイさんはきっとなおさら誕生を心待ちにすることなんてない。
「――――前を向かなきゃ。私は……母になるんだから。」
口先だけで強がってみても、心はぐらぐらで……この部屋にいるとずっと、視界は滲んだまま。
同じ場所に帰っているはずなのに心は離れていく……
私はそれが、ひどく怖い。