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【進撃の巨人】片翼のきみと

第191章 回想②




その日も、兵舎でリヴァイさんと話をすることはなかった。

もちろん部屋に帰るのも……1人で、長く思える帰路をぼんやりとしながら、歩いた。

次の日の朝目覚めると、一応は帰って来てくれていたリヴァイさんにまた食い下がって……マリアさんのところへ行くと話した。リヴァイさんは一言、『好きにしろよ』と言って……また朝早くに、部屋を出た。

ぱたん、と閉じられる扉の音を聞いて――――……涙がぽろ、と落ちたなんてみっともないことは、絶対にリヴァイさんには言わない。



それからしばらくは殆ど会話のない日が続いて……、マリアさんのところへは一人で無事行って帰る事ができたけれど……訪問した後も、私とリヴァイさんはすれ違ったまま。

もうこの部屋に帰る意味も、分からなくなってきた。

――――どうしたら早く帰ってくれるのかな、食事を作っていたら、帰って来てくれるかな……、食べて……作ってくれたのかって褒めてくれるかなって僅かな期待をしながら、教えてもらった通りに重いフライパンを熱して卵を焼く。

じゅう、と音が鳴って……タンパク質が焼ける匂いが立ち上った時、胃が握りつぶされたように収縮した。





「――――う、っ……ぇ……っ…。」





心臓も胃も、握りつぶされるみたいな感覚で……苦しくて……、食べ物の匂いが気持ち悪くて……これが “つわり” なのか……と思いながら、 なんとか耐えながらじわじわと火が通って色の変わる、卵を見ていた。





「――――あんなに望んでくれたエルヴィンには、結婚しないって……言ったくせに、私はなにを……してるんだろう……。」





自嘲したようにはは、と一人、感情のない笑いが込み上げてくる。まるで夫に帰って来てと縋る妻のようなことをしている自分が可笑しくて……、エルヴィンに申し訳なくて、私には重すぎるフライパンを置いた。


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