第191章 回想②
「――――……忙しいから……、私も、早く着替えよう……。」
私も急いで着替える。
せめて朝兵舎に行く時は、リヴァイさんと一緒に行きたい……。しばらくしてリヴァイさんがお風呂からあがって来て、兵服に身を包んでいる時に、私はあることをもちかけた。
――――とっても勇気がいること。
絶対ダメだって言われる。
……けど、どうしても行きたい場所がある。
「――――リヴァイさん。」
「なんだ。」
リヴァイさんはその肌にシャツを羽織る。
その仕草すら綺麗で、見惚れてしまっている自分を振り払うみたいに首を振ってから、私の意志を伝えた。
「――――近い調整日に、ヤルケル区まで……ある人に、会いに……行こうと思っていて……。」
「――――誰だ、ある人って。」
その三白眼が、ジロリと私を睨む。
「………エルヴィンの……お母様です。」
「――――………。」
リヴァイさんは少し目を開いてから、私の言葉を待った。
「――――エルヴィンのお母様は身よりも無く……精神的な病で病院にいらっしゃるんです……。エルヴィンの遺品を……届けに、行きたくて……。」
「――――俺とお前の調整日が重なるのは随分先だが。」
当たり前に一緒に行く前提にしてくれているところが、リヴァイさんらしくて……少し嬉しい。
「いえ、私が1人で。」
「馬鹿か。」
「……………。」
有無も言わさず一刀両断されて、ぐ、と怯んでしまう。
「お前自分の体のことが本当に分かってねぇらしいな?」
「わかってます……!あの、馬では行きませんよさすがに……馬車で行くので大丈夫です。長居もしません、用が済んだらすぐに……。」
「――――精神的に病んでる母親に息子の死を伝えて、錯乱したエルヴィンの母親の姿を見て、お前は耐えられるのか?」
「――――………。」
「過呼吸で倒れるか、病で倒れるかも知れねぇ状態で、なにが大丈夫だ。笑わせんな。」
「――――倒れても病院ですから大丈夫ですよ。」
あまりに取り付く島もない様子に、思わず唇を尖らして反論してしまった。
――――案の定リヴァイさんはちっ、と舌打ちをして面倒臭そうに長く息を吐いた。