第16章 姉弟
「多いと、困る………?」
「まったく姉さんは純粋すぎて腹が立つよ。」
「待って、どういう…………。」
「この作戦は、壁を奪い返すことが目的じゃない。いらない人間を処分するための作戦なんだから。」
「――――――――――――………。」
「死にに行かせるのに、医療従事者を連れて行く意味はない。そして、病床だって必要ない。怪我人なんて、ほとんど出ないんだから。でないと、ウォールマリアが奪われた今、この領地内で今までと同じ規模の人間は生きてはいけないからね。そして―――――――エルヴィン団長だって、分かってるはずだ。」
「……………そんな、エルヴィン団長はそんな人じゃ………。」
言いかけて私は、毎回の壁外調査後のエルヴィン団長を思い出す。死者数を数字で処理する姿に、悲しいと感じたことがあったからだ。
「壁外調査のほうがよっぽど狂ってると思うよ。この作戦は、上の偉い一部の人間が、自分たちに関係ない、顔も知らない人間を死にに行かせるだけなんだから。調査兵団の壁外調査は、教えて、育てて、一緒に生活している仲間を死ぬと分かっていて刈り出すんだ。どう考えても、普通の精神じゃないよね。」
「……………。」