第16章 姉弟
「…………!」
「姉さんは僕の事が大事だと言いながら、結局僕を置き去りにしたじゃないか。あの暗くて冷たい屋敷に………。たまに帰って来た時に、ハルと笑顔で外の話をする………その声が聞こえる度に僕は本当は―――――――ズタズタに、してやりたいと思ってた。」
「―――――――――っ……ロイ………。」
そんな風に、思っていたなんて。
悲しくて、切なくて、申し訳なくて、気付いてあげられなかったことが不甲斐なくて、たまらない。
最愛の弟が、まるで知らない人のように見えた。
「―――――ねぇ。だからさ、一つくらい姉らしいことをしてよ。………夢を諦めて、僕のところへ帰ってきて。一生――――――僕だけの、美しい姉さんでいてよ。」
ロイの言葉に、違和感を覚えた。これはきっと彼の本音だ。だけど――――――――
「………私がライオネル家に嫁いだら……一緒には、いられないわよ…………?」
私が問うと、ロイは大きく笑った。
「あはははははっ!」
「……………ロイ………まさか………。」
「嫌だな、調査兵団から連れ戻して、わざわざ他所へやるわけないじゃないか。………それにね。今回の壁外調査の医療資金は、多いと、困るのさ。」