第2章 変化
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ワーナーさんとリヴァイさんに会わなくなってから、私は必死に医学を学んだ。
あの時から、一人での外出はできなくなった。私の身を案じて、ハルが必ずついて来る。
それは彼女の愛だということは十分すぎるほどわかったし、私はそれを受け入れた。
十四歳になったある日、私はハルと共に馬を駆り、ずいぶん遠くまで来ていた。ハルが、どうしても連れて行きたい場所があると言う。ウォール・シーナを出たのは初めてだった。
広大な自然。
ここで、暮らしている人たちがいる。
私は何も知らなかったのだ。私の住む世界は、王都は、なんてちっぽけなんだろう。
エルミハ区から南東へ少し進んだその先の山あいに、小さな集落があった。馬を繋ぎ、小さな山小屋の方へ歩いていく。
「ねぇハル。ここに……何があるの?」
「………どうしても、もう一度ちゃんと………話して頂きたくて………。」
ハルの言葉に、もしかして、と思った。
私の頭によぎったその人の姿が、目に飛び込んでくる。庭に真っ白なシーツを広げ、私と同じ色の髪が風になびいている。
「お母様………!」
私の声に、母はこちらを振り向いた。
その顔は、今にも泣き出しそうで、どこまでも優しく、会いたかったという思いが、言葉にせずとも伝わった。私は走り出していた。
母の胸に飛び込み、泣いた。
「ナナ………!大きく……美しく……なったわね……。」
母は私の髪を撫でた。
「………!」
「……ハル。本当にありがとう。この子に会わせてくれて。」