第2章 変化
イザベルはきょとんとした顔で俺を見たが、すぐに満面の笑みで答えた。
「当たり前だろ!!兄貴が拾ってくれなきゃ、俺は死んでた。生きる事が悪くないって、楽しいって思えるのは、あんたがいるからだよ。兄貴。」
「そうか………。」
感じたことのない感情に戸惑う。
俺を必要としている奴がいる。その事実は、このクソみてぇな世界で生きることも悪くない。
そう思わせてくれる。
一人でいた時よりも、俺に近づいて来る輩が増えた。
イザベルを俺の弱みと勘違いしてつけこもうとする奴や、ガキだが女を連れている俺に興味本位で近づいてくる奴だ。
そんな奴らは一人残らず叩きのめしてやったが、その中の一人がファーランだ。俺よりも少し年下で人懐っこく、小狡いのにどこか抜けている。俺の中で一人、また一人と守りたいと思える人間が増えていった。
ファーランの連れていた少数の仲間と共に、生きるために盗み、脅し、時には殺しもやった。
地上の兵士が使う、立体機動装置が時折闇で流れてくる。俺たちはそれを手に入れ、地下街を飛び回った。アンカーを刺せる障害物だらけの地下街では、重宝する代物だった。
もはや、地下街で俺たちに逆らう者はいなかった。
時折憲兵団が俺たちを捕まえに来るが、のろまばかりで相手にならねぇ。
あいつは元気だろうか。
エイルの事を思い出すことは減ったが、時折ふとあいつの大きな目を思い出す。
あの大きな目には、大きな空が映っているだろうか。