第190章 回想
ハンジさんに伝えた時は……ハンジさんもまた、想定外の反応を見せてくれた。その場にはリヴァイさんもいて、ハンジ団長の部屋で……診察の報告をした時に……真実を話した。ハンジさんは私が妊娠を告げた時、目を見開いて……そして涙を一筋、零した。
「――――いるの?ナナの中に……赤ちゃんが……?」
「はい……。」
「お腹、触ってみてもいい?」
「はい……、あの、でもまだ全然わからな……。」
ハンジさんはゆっくり私の側に寄って、お腹に手を添えた。
「――――最期まで抜かりない奴だね。本当にあの――――……曲者は。」
「…………!」
「今頃いつものあの顔で、目を細めてこっちを見てるんだろうなぁ。――――本当にあなたは、面白いよ。ナナはいい迷惑だろうよ?」
ハンジさんはふふっと笑う。
――――私は何も言っていない。
けれどハンジさんは……サッシュさんとは真逆で、エルヴィン団長の子だと確信でもしているようだった。
私は迷ったけれど、ハンジさんには……言えたんだ。
本当のことを。
「――――あの、ハンジさん……。」
「ん?」
「――――エルヴィン団長の、だと……決まってるわけではなく……、その……。」
「―――――!」
ハンジさんはぐるん、とリヴァイさんのほうを見た。
「――――なんだよクソメガネ。」
「――――そうなの?!」
「………は、い……。」
少しだけ、怖かった。
呆れられて……しまうんじゃないかって。でも、やっぱりつくづくハンジさんの言動はいつも私の想像など容易に飛び越えて行ってしまって……そして、人を救うんだ。