第190章 回想
定期診察から兵舎に戻る間は、ずっとずっとその事を考えていた。リヴァイさんと生きていくと……決めたのに……もしこの子が、エルヴィンの子だとしたら……どんなに私を愛してくれているあなたでも、私を今度こそ見捨てるかもしれない。
そう思うと……産むことが怖いと、母親にあるまじきことを私は――――……思った。
こんなにも簡単に人が死ぬ世で、どちらにせよ愛しい人の子であることは間違いなくて、なんて幸せなことだろうと、普通の女の人なら思うのだろう。
でも私は、『みんなの側にいられない、病気を治して一緒に戦いたいのに』『もしエルヴィンの子だったら、私はリヴァイさんをこの先永遠に失うのか』なんて自分のことばかりで、母親らしく『この子の為に生きよう』だとか、そんな綺麗な気持ちが見つけられなかった。
――――カルラさんと、マリアさんを思い出して……自分がおかしいんじゃないかと、人間として未熟で……女性として本来持つべき母性本能というものが欠如しているんじゃないかと……怖くなる。
普通は、あんな風に子供に全ての愛情を注いで、愛して……例えばその誕生を指折り数えて待ち望むものなのだろうか。
――――お母様も、そうだったのだろうか。
私を身ごもったことが分かった時……喜んだ?
それとも――――……。
そんな負の感情がぐるぐると頭の中を巡って………胸が、息が詰まって………とても、息苦しい。
――――助けて、リヴァイさん。
――――いや、助けてなんて言えない。
他の男性の子を身ごもっているかもしれない女を、誰が愛せる?
――――リヴァイさんに、言うのが……とても……怖い。