第189章 鎹
リヴァイさんからの手紙には、義勇兵を介してジークの要求に応じることになったと書いてあった。
兵站拠点には外から来た人々を沢山受け入れて、技術開発の手助けをしてもらっているらしい。地面にレールを引いて、その上を多くの人や荷物を積んで走行できるような ”列車” と呼ばれるものも、作り始めるそうだ。
「――――本当に、できるんだ……。ねぇエルヴィン……外の世界の一部は……想像、した通りなのかもしれないよ……。」
いつかエルヴィンと話している時に想像したそれが、実現しそうだという報せに胸が躍る。
――――と同時に、不安にもなる。
そうやって向上した技術の向かうところ、使い道はなんだと言えば……戦争だ。その技術が、ただ民衆の生活を豊かにするものであればどんなにいいか……。
私のその予想を裏付けるように、立体機動装置も対人の物に装備を変え、編入や新規加入で増えた兵士も含めて、調査兵団の面々は全て最新式の立体機動装置をつけるようになったと書いてあった。
でも、その後の文に少し、笑ってしまった。
“――――だが俺はつけない。旧式を使う”
なんとなく分かる気がする。
聞く所によると、最新式の立体機動装置は銃口の下からアンカーを射出できるようになっているから……銃口を向けている方向にしか移動ができない。
立体機動にあまり得手でない者には、扱いやすいのじゃないかと思う。
でもリヴァイさんは……アンカーを指した方向にしか銃撃できないことが不便なのだろう。リヴァイさんはいつでもどんな時でも全方向が間合いで……攻撃可能範囲が桁外れに広い。
それをわざわざ狭めることはしないつもりだ。