第189章 鎹
「ねぇナナはどうしてますか?愛する子どもと……平和に、笑って過ごしているといいんですが。」
「――――それも始祖の巨人の力で何か見たのか?」
「――――………いえ?」
エレンはまた、真実か嘘かもわからない冷えた笑みを見せた。
「やっぱり自分の子は可愛くて仕方ないですか?毎月手紙を書くほど。―――あぁでもまだ会ってもないのか。その腕に抱きに行ってやればどうですか。ナナも喜ぶでしょう。」
「お前には関係ねぇよ。」
「きっと大事で大事で仕方ないはずだ。――――だから守りましょうよ。地鳴らしでもなんでも使えるものは使って――――……守るんだ、俺達の故郷と………大事な、人達を……。誰も手出しできないように……。」
――――やっぱりこいつは誰の手にも負えねぇ。
始祖の巨人を手に入れてより厄介な存在になっちまった。そしてそれを増幅させる兄貴……ジークの存在。
――――ナナが愛する者は俺が守る。
ナナも、そのガキも、ハルやロイ……母親も――――……そしてお前もだ。エレン。
だが俺は初めて……守ってやりたくても、俺の手に余るほどの厄介な野郎だと……感情もなく一点を見つめるエレンを見て、思った。